俺様とネコ女
何でもないことにドキドキさせられて、心躍らされて。かと思えば冷たくあしらわれて、ヘコまされる。コウの思い通りに操られてる気がする。

今まで、自分が劣勢だと感じた恋愛はしたことがない。自分から連絡先を聞いたのは、コウが初めてだった。


次会ってもらうには、どうしたらいいんだろう。何て言って誘えばいいんだろう。軽いノリで、冗談っぽく、かな。

どうしよう。どうしよう。私いつも、どういう風に誘われてるんだろう。

プチパニックに陥っていたとき、ふと右にコウの視線を感じた。


「お前んちどこ?」

「J駅」

「J?遠い。やっぱ無理」

「送ってくれようとしたの?」

「まさか」


あ、この曲・・・

まさかじゃないでしょ。その気がなきゃ、やっぱ無理なんて言わないでしょ。って言ってやろうとした時。コウの車から流れてきた音楽は、私の大好きなアーティストの曲だった。

確かにすごく人気のアーティストだけど、コウも同じ音楽を好んで聴くんだと思うと興奮した。

たったそれだけのことが嬉しい。
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