俺様とネコ女
ここの記憶を追い出そうとするも、あいつはなかなか消えない。


ほらみろ。お前には謙虚さが欠如してるって言っただろう。


――・・・うるさいバカ!

あいつがクソ生意気な捨て台詞を吐いて逃げたあの日。俺に向かってそんなことを言った女は初めてで、正直面食らった。

唇にまだあいつの感触が残る中、走り去る背中を見ながら、手に持っていたあいつの眼鏡を握り締めた。


追いかけて渡そうなんて思わなかった。偶然手に入れた、次に会う口実を。

そういうつもりで眼鏡を外したわけではなく、偶然の産物だったが。


家に帰る間も、帰ってからも、あいつからの連絡を待っていた。待つのが嫌いな俺が、胸踊らせて待つなんて、信じ難いなんてもんじゃない。

別れてから1時間後、やっとメッセージがきた。


”メガネ泥棒!”


たった一言のそれに、部屋で1人吹き出しそうになった。

さあ。どう返すか。テーブルの上に置いていた、俺と全く同じ眼鏡を見ながら、意図せず口角を上げていた。
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