俺様とネコ女
でね。と、少し声のトーンを落とした課長。艶っと光る唇がやけに女っぽい。

「赤澤くんって言う、かわいくて優しいいい子がいるの。愛想よくっていつも笑顔で」

うふふと笑いながらさらに続ける。

「でもね。社内の誰が告白しても駄目なのよ。断り文句が”社内恋愛しません”なんだって」


なんかすごくない?うふふ、と微笑む。

赤澤くん。その名前に反応した私。苗字がコウと同じなだけでこの始末。

遠慮がちに微笑んだものの、正直、その赤澤くんには興味ない。私が好きな赤澤くんは、その人とは正反対の、無表情無口男。

俺様で、どS。


「早速聞いちゃうけど、上野さん彼氏いるの?」

マスカラがたっぷり乗った長い睫毛をぱちぱちと瞬きさせながらの質問。

「えっと、いないです」


失恋したばかりのはずなんですけど、でももう好きな人が出来ました。


「そうなんだー。今度、1課と飲み会するの。あ。上野さんの歓迎会兼ねちゃお」


朝から飲みの話かよ!・・・と、心の中だけでつっこむ。でも歓迎会は嬉しいかも。


「ありがとうございます。ご迷惑でなければよろしくお願いします」

かな。この場合の模範解答は。
< 65 / 337 >

この作品をシェア

pagetop