俺様とネコ女
トイレ内で真顔で詰め寄ってくる山本主任。かなり酒を飲んだのか、顔が赤いし眼が充血している。

「俺こころちゃん送っていくから。赤澤すまん。こころちゃんに手を出さないでくれ」

「主任、本気ですね」


笑いながら答えたが。もう出してるよ。と正直に言うべきか。それに、主任に送らせたくない。俺以外の誰にもだ。


「赤澤、ああいう清楚でかわいい女の子はどうやったら落とせるかな」

「さあ。わかりません」


本当にわからない。女を落とそうだなんて思ったことがない俺が、助言できるはずがない。

「すいません、ちょっと腹痛いんで」

「あー、悪い。頼むぞ」


念を押す山本に笑顔で返事をし、トイレの個室に入り、立ったまま思案する。

いくらもう手を出してるとはいえ、会社の先輩に手を出すなと言われたら、さすがに躊躇する。

しかも相手はバリバリの体育会系の縦社会で生きてきた熱血男。それでも俺はここにメッセージをした。

”帰り山本主任に捕まるな。駅の近くで待ってろ。”


申し訳ないが、あいつは絶対譲れない。
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