俺様とネコ女
「俺歩いて帰るんで。失礼します、お疲れ様でした!」


店外へ出るや否や、コウは決して作りものとは思えない笑顔を残して、いなくなってしまった。でも、向かった先が家方面ではない。


「こころちゃん、電車組だよね」

山本さん、早速ですか。


「今日友達の家に泊まるんです。友達の家この近くで、」


うん。全てがウソではない。コウの家は近くだった。 でも泊めてくれる保障はない。

「危ない危ない。送っていくよ」

「友達がもう近くで待ってるんです。本当に大丈夫です。ありがとうございます」

「えー、大丈夫?」

「はい、あっ、主任、みんな行っちゃいますよ?」


ごく自然に帰らそうと仕向ける私。山本主任は駅へ向かう集団へ、1歩2歩と、ノロノロと歩みを進めた。
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