俺様とネコ女
それでも名残惜しそうに、上半身はこっちを向いたままだ。


「わかった。今度は送らせてね」

ニコリ、微笑んでみせた。今度があるのかどうかわからないんだけど。

集団に駆け寄って、一度こちらを振り返ってブンブンと手を振ってきたので、それに小さくバイバイをして、完璧に姿が見えなくなって、ふう、と息を吐いた。


とりあえず成功。とりあえずビール。ううん、ビールよりコウ。コウに会いたい。

スマホを取り出して、コウが消えた方面に歩きはじめた。コウはすぐ電話に出てくれた。


「無事逃げたよ」

”どこ?”

「そっけないねー。今ね、コンビニに向かってる」

”俺コンビニにいる。何か買うなら言え”

「ビール!」

”うちにあるからいらない。とりあえずこっちこい”


聞こえるや否や、通話終了のむなしい機械音が聞こえた。
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