秘めた恋
「じゃぁ、和馬くんを私に返して?」

「え?」

突然言われたセリフに理解できず、
きょとんとしていると

「やっぱり和馬くんが私にとって一番だし。」

と言ってきた。

「あの・・・返して、だなんて最初っから私のものじゃないんで」
と言いながらもなんか彼女の言葉に少し嫌悪感を感じていた。

「ふふ~ん、相手にされてないわけね。」

カチン。
なんで嫌悪感だかわかった。
傲慢で人を見下した言い方をするんだ、この人。
こんな人のどこが好きなんだろう、東郷さんは・・・。

私はため息をつき少し心を落ち着かせると
「キ、キスとかまではしましたから。」とあくまでも冷静に応えた。

彼女の片眉がぴくっと反応したのが目に入った。

彼女は一瞬目をそらすとすぐ私を見据えて
「へ、へぇー。なぁんだ。ただの会社の仲間なんて嘘じゃない。
最初っからそう言えば良いでしょ?」と言ってきた。

なに、この人。

私は苛立って思わず「それに美雪さん、金目当てで東郷さんに近づいたんでしょ!」と
言うと彼女は「え?」ときょとんとした顔になった。

「なにそれ?」

彼女が眉間に皺を寄せて聞いてきたので

「だから、東郷さんに聞いたんですよ。彼が金持ちだから美雪さんが近づいてきたって。
彼は本気であなたのこと好きだったんですよ!なのに、なによ、金目当てって。
彼が女とか愛とか信じられなくなったのはあなたのせいじゃない!!」

思わず脇目も振らずに怒鳴り声を上げてしまった。
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