秘めた恋
すると、なぜか私の隣に古橋くんが腰掛けた。

「な、なんで隣に座るの?他にも席が空いてるんだから
もっと離れて座ってよ。」

そう彼の方を向いて言うと

「もう面倒なので嫌なら高梨さんが移動してください。」と

自分勝手なことを言ってきた。

「はぁ?古橋くんが移動しなさいよ!」と彼の腕を掴み、
ぐいっと引き寄せると「あのー一応会議室なんで死語は謹んでもらえるかな。」と
私たちの前に座っている賢斗の父、杉並さんが声をかけてきた。

私は、ハッとすると「す、すいません。」と言って
謝り、前に向き直った。

その時、私右斜め前に座る賢斗と目が合った。
嫌悪感たっぷりの顔で私を睨んでいるに気づいた私は
一瞬にしてサーっと血の気が引く感じがした。

こんなところを見られるなんて。
ただの古橋くんとの戯れだったにせよ、
誤解を招いたかもしれない。
穴があったら入りたいと思った。

私は一つ深呼吸して自分の胸に手を当てた。
鼓動がいつもより早まっている。
さっき古橋くんに触れられた手に感触が残っている。
顔が熱を帯びたように熱くなってるのを感じる。

私は目を瞑るとまた一つ深呼吸をして
乱れた心を落ち着かせた。



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