秘めた恋

すると今度は扉がノックされ、副社長と森さんが入ってきた。

「遅れてすまない。喉が渇くだろうと思い、彼女を社に呼び戻していた。」

副社長がみんなを見渡せる場所に座ると
森さんがみんなの席にお茶を置いていった。

「関係者以外は立ち入り禁止じゃないのかい？」
賢斗の父、杉並さんがそう言うと

「お茶汲みも会議には必要ですよね？」と
逆に聞き返していた。

「お茶だなんてこんな時に悠長な。」と
杉並さんがイヤミを言うと

「人は極度に緊張すると喉が渇くという。今回の会議には重要なことだと思うがね。」
と副社長もイヤミで返していた。

「なんなんだね、今日の会議のテーマは。見たところによると
私の身内が集められたようだが。」と杉並さんが少し怒りを顕にすると

「今日の会議のテーマは杉並ＰＬの妹が考案したという『huaの万年筆誕生秘話』と
『経理処理の改ざん』と言ったところだ。」と試すような口調で副社長が応えた。

賢斗の弟は先ほどから俯いていて表情は分からなかったが
賢斗の片眉がぴくっと反応したのを私は見落とさなかった。

「どういう意味だね。」杉並さんが聞き返すと

「言葉の通りだ。まず順を追って説明してもらう。杉並ＰＬの妹が考案したというhuaを
もう一度どういう経緯でデザイン画が完成したのかこの場でみんなに説明してみろ。」と
副社長は賢斗に向かって応えた。