秘めた恋
初瀬中学ではサッカー部のキャプテンを務めていたと、
初瀬中学の子達まで彼の話に加わった。

すると「ねぇ、あの子に話しかけないの?」と
ある女生徒が私の前に座る子に話をかけた。

だって・・・、とその子が一瞬私を見ると
「根暗そうじゃん。」と言って私に背を向け
先ほどの女生徒に笑いかける。

慣れているから別に動揺はしない。
ただ、ここでも孤独を感じる羽目になるなんてと
これからの生活に憂鬱さを覚えた。

そんな時だった。

「ねぇ、ちょっとあれ!古橋君じゃない!?」
「え、マジ!?同じクラスだったの!?」

俯いていた私は彼女たちの言う方へゆっくりと視線を向けた。

え・・・・?

「おい、古橋どこほっつき歩いてた。」

みんなに囲まれて揶揄されてる彼を見た。

「先生に呼ばれて職員室に行ってた。たいしたことねーよ。」

綺麗な歯並びを惜しみなく見せながら彼はニカッと笑うと
じゃれるように同級生の男の首に腕を絡ませ絞めるポーズを取った。

「う、ぐるじー。」まいったまいったと笑いながら同級生が古橋君の腕を叩いた。

冗談っぽく勝ち誇った顔をした古橋君と一瞬目が合い、私はすぐに目を逸らした。

でも、紅潮する頬まではごまかせなかった。


格好良いのはもちろんのこと、あの子供のように無邪気に笑う少年に
私は恋をした。

しかし、決して結ばれるとは思っていなかった。

どうして根暗の女が人気者の彼と結ばれようか。
別世界の人・・・・ただあの頃は憧れで、おこがましくも浅ましい煩悩は
私の心の奥底に封じ込めていたのだから。


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