秘めた恋
「こいつ、俺にこんなマネしてクビが怖くないのか・・・。俺のオヤジは
執行役員だぞ」

目の前で起こったことに動揺しながらも賢斗がそう言うと
古橋くんは私から唇を離し

「それが怖くて、好きな女を守れるかよ」

と応えた。

「ば、バカな。このままじゃすまん。私はこの会社では権力を持ってる。
社長の信頼だって厚いんだ。株式総会でお前を副社長の座から下ろすことも
私には出来るんだぞ。」

今度は賢斗の父が副社長に脅しをかけているようだったが
彼は臆することなく平然な顔をして「その前に俺がお前をくびにするよ。
この一件を株主総会で説明して果たして、俺とあんたどっちにみんなが従うかな」と言うと
賢斗の父はぐうの音も出なくなった。

総務の賢斗の弟は力が抜けるようによろよろと腰を抜かし、
賢斗はくそっと言って椅子を蹴った。
執行役員の父は副社長を睨んで「最初っからお前が気に食わなかった。」というと
副社長も上機嫌になって「おう、奇遇だね。俺もだよ。」と応えた。



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