秘めた恋
***

時々、俺は懐かしい頃を思い出す。

昼休み、委員会の仕事で図書室にいる時。
俺は、決まって食べ終わった後に目をつむり
寝たふりをした。

美優が、息を潜めながら恐る恐る俺の顔に近づけ
キスをするのを待つためだった。
普段は内向的なのにこうゆう時だけ大胆になるところも
可愛くて好きだった。

だけど、もう目を閉じてもあの時のように微かに震えた唇で
甘いキスをしてくれる人はいなくなった。

あいつは変わってしまった。

「大樹くん・・・好きだよ」

あの頃のように緊張しながら顔を真っ赤にして
可愛い顔して笑う美優はいなくなった。


だけど、俺は今でも・・・

あいつ以外には触れられたくない。

今でも俺は・・・・

美優だけしか見えない・・・

***



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