秘めた恋
美雪さんはヨロヨロと後ろに後ずさりすると
「ふっ、私の負けだわ・・・。完全に・・・」とつぶやき
そのまま踵を返し、去ってしまった。

「なんだったんだ~、あの人は。」

ちんぷんかんぷんのまま立ち尽くしていると
「いやーまた大胆な愛の告白だったな。聞いてて恥ずかしかったよ。」
といやみ~な聴き慣れた声がして私は、ゲッと思いながら
恐る恐る後ろを振り返った。

「な、なん、なんで後ろに!いつの間に!?」

「いやー修羅場に関わりたくなかったから物陰に隠れながらきた。
そういや、さっき言ったの本当か?」

「う・・・」

恥ずかしくて言い返せない。自分でも信じられないくらい
大きな声で好きとか言ってしまった。

でも、誤魔化したくはなかった。

「はい、本当です。」

私は、はぁ~と息を吐くと彼を見上げて真顔で応えた。

「もう、笑ってもいいですし、相手にしてくれなくてもいいですよ。
でも、これだけは本当です。私は本気で東郷さんのことが好きです。」

さっきまで笑っていた彼も、真顔になると
「俺を信用できるって?」と聞いてきた。

「はい、もちろんです。だからもう苦しまないでください。」

「は?」

「女を信用出来ないだなんて言わないでください!!」

私は大声でそう言った後、下を向いて目をつむった。

すると上から「まぁ、お前みたいなバカはウソとかつけなさそーだしな。」と
人を見下したような笑い声が聞こえた。
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