秘めた恋
「また、こっち向かないかなぁ」なんて
思った自分に驚いた。

な、なに期待しているの自分。

ビールをぐびっと飲み、自分を落ち着かせると
また私は彼の方に目を向けた。

「あーこんなはずでは。私は年上の男にしか興味ないのに」
そうつぶやくとある女性と目が合った。

彼女も今年このサークルに入った一年の水沢花音。
彼の隣に陣取るくらいだから相当彼のことが好きなのねと思い、
とりあえずニコっと笑ったらシカトされた。なんだ、あの女。

「ね~、和馬く~ん。私、酔っちゃったよ~。」と
びっくりするくらいぶりっ子して彼の腕にしがみつき甘えだした。

なんという小悪魔。すると彼は
「マジか。大丈夫か?」と心配そうに応えた。
タメ語を聞くとあの二人は同級生で仲が良いんだなと実感し、
なぜか年上の私からすると不思議な感覚がした。

「もう、帰ろうよ~」
「えー俺はまだいるよ。辛かったら先帰ってな。」
「え~送ってってぇ~」
とひと目も憚らず彼女は彼に擦り寄った。

「でも、俺は・・・」
どうやら彼はまだこの会に居たいみたい。見かねた私は彼らのところまで近づき
「私が彼女を送ろうか?私もそろそろ帰ろうと思ったし。」と声をかけた。

これが私と彼と彼女との初めての対話だった。
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