秘めた恋

翻弄される

私は、なんとも居心地の悪い甘ったるいムードを追い払うかのように
「そういえば今日は何をしていたの？」と違う話題を振ってみた。

「今日ですか？」彼は突然の質問に戸惑っていたが
「実は父が経営している会社に行って仕事を手伝っていました。」と
笑顔で応えた。

「へ～そうなんだ。」
「まぁ、俺が大学を卒業したら後を継がないといけないんで・・・」
「そうなんだね～。」

私は、手元にあったりんごサワーを持ち上げると
一口飲み、テーブルに置いた。

思わずため息が出た。

内心“コネで入れるんだから良いご身分だな”と思った。
私なんてグランドスタッフの面接が立て続けに落ちてるというのに。

そう心の中で僻みを言っていると突然、「美雪先輩は？」と聞かれた。

「え？私？」

一瞬、なんのことか分からなかったが頭の中で逡巡し、
今日の出来事のことを聞かれてると理解した私はすぐさま

「私は今日、理沙とラン・・・」

言おうとした瞬間、突然個室の扉が開き、

「あーやっぱりー！和馬くんだ！」と癇に障るようなこの甘ったるい声がしたかと思うと

要注意人物水沢花音が場の雰囲気を気にすることなく入ってきた。