秘めた恋
「美雪さん・・・」

そんな泣きそうな甘い声で呼ばないでよ。

彼の顔が近づいてくる気配がして私は咄嗟に
彼の口を手で塞ぐと彼の後ろにあった漫画を
もう片方の手で掴み、「何するのよ!」と小声で言いながら
漫画を持つ手で彼を叩いた。

「痛っ!」

「もう、ふざけないでよ、この酔っ払い!さっさと寝なさい!」と
周りに聞かれないよう小声で怒鳴ると
私は彼から離れ、座って漫画を読み始めた。

東郷くんは拗ねたのかもう私に手出しはしてこなかった。

はぁ・・・。

私は軽くため息をつくと自分の胸に手を当てた。
心臓がドクドクと激しく鼓動しているのにむかついた。

なんで、あんなことでこんなに翻弄されるんだろう。

すると数分経って彼の寝息が聞こえると私はますます呆れて
ハッと自嘲気味に笑った。

「なんでこんな年下に振り回されてるんだろう。」

そう思ったらショックが隠せなかった。
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