秘めた恋

呪縛

授業が終わり、サークルの女子更衣室に向かうと
私はテニスウェアに着替え始めた。

遅れて更衣室に入ってきた理沙が隣に来ると
「ねね、土曜日のデートはどうだったのよ~。」と
好奇心旺盛な目をして聞いてきた。

「内緒。」

着替えを終えた私はロッカーの扉をパタンと閉めて
テニスコートに向かった。

シューズを履き終え、テニスコートに入ると
ネットをセットしたり、ボールを運んでいる一年生達が
目に入った。

私は自然に彼を探していた。

いない。

そう思うとなぜか安堵のため息が出た。

すると「美雪先輩、先日はお疲れ様でした!」と後ろから声をかけられ
「ひゃっ~!」と驚いて変な声を出してしまった。

後ろを振り向くとウェアに着替えた東郷くんがラケットを片手に
人を見下ろすような姿勢でなぜかにやにやしていた。

「え、あ、こちらこそありがとう。」

少したじろいで言うと彼は私をジロジロ見るなり

「美雪先輩、背小さくないっすか?」と言ってきた。

「は!?」

「実際は小さいんすね。ヒール履いてるから今まで分からなかったけど。
なんか可愛いっすね。」

「か、か、かわ・・・かわい?」

なんだろう、先日のおどおどしていた彼はどこにもなく
なぜか馴れ馴れしく私に接してくる彼。
あの一件で打ち解けた気になってるのかしら。

「あ、あの、えと・・・。」

「どうしたんすか、先輩?」

いたずらっ子のような表情をしていたかと思ったら
今度はきょとんとした表情で首をかしげ私を見下ろしてくる。
絶対わざとでしょ!

「私は一応背は高いほうよ!167もあるんだから!」
捻出して出た言葉がこれ。だけど彼に
「え~小さっ!俺、181だし。」とさらっと言われた。

な、なんだろう。何も言い返せなくて悔しい。そう思っていると
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