秘めた恋
「あ、いや、私は別に・・・」

これ以上、彼といると鼓動が早まるので逃げたかったのだが

「男子更衣室入るの初めてでしょ?こっちに歴代のトロフィーとか
写真が飾られてるので見たらいかがですか?」と言われた。

確かに私が1年の頃、星野先輩が個人試合で優勝したのを思い出し、気になった。
その時の写真があるかなと思い、「あ、じゃぁ、ちょっとだけ。」と言い
恐る恐る室内に入った。

彼の上半身が目に入らないよう、室内を見渡しながら入ると
トロフィーや写真が飾られている場所を見つけ、その前で立ち止まった。

「ん~・・・」

あの時の集合写真を探していると後ろから「美雪先輩。」と
声をかけられ「ひゃっ!」といつぞやと同じ変な声を上げた。

後ろを振り向き「何!?」と聞くと「喉乾きません?俺、買ってくるんで
それ見ててください。」と言ってきた。

「あ、うん、ありがとう。」

思いっきり上半身を見てしまった。

彼はT-シャツをバッグから取り出し、着ると、ここを出て自販機に向かった。

私は、また写真に目をやるが何も探す気が起きなかった。

彼の適度に日焼けし、筋肉質で引き締まった上半身を見て思わず
見とれそうになった。それぐらい、美しい体と思えた。

やだ、私ってば、何を考えて・・・・。

すると彼が飲み物を買って戻ってきて「美雪先輩、座って飲みましょう。」と
言ってきた。
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