秘めた恋
東郷くんは私に積極的にアプローチしてくるけど
自分のことは話してくれない。

私と一緒にいる時よりも水沢さんといる時の方が楽しそう。
だって、彼は年上の私に気を遣った態度ばかりしてる。
水沢さんの前で見せる彼の素の表情を私には見せてくれない。


私にはあんなふうに心を開いてくれない。


だけど私はあの子のように彼に素直に甘えることが出来ない・・・・。
私だって本当は・・・

あぁ、私はずっとあの子が羨ましかった。

彼の隣で躊躇なく彼に触れて、甘える彼女が羨ましかった。

私もいつの間にか彼のことが・・・


私はそのまま涙を流すと「星野先輩、ごめんなさい。」と言って立ち上がり、
カフェを後にした。


きっと今日も彼はいる。自主練をしている、きっと。
万年筆返さなきゃ。


私は後先のことは考えずただひたすら彼がいるであろう
大学に向かって無我夢中に走った。

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