秘めた恋
海に到着したのは夕暮れどきだった。

波打ち際に立ちながら彼が残念そうに「あー美雪さんの水着姿が見たかった。」と
言ってきた。

「バカ」

私は照れながら、そう反応した。

「まぁ、夕暮れ時も素敵じゃないの。」そう言いながら私は裸足で海に入ると
彼に向かってバシャーっと潮水をかけた。

「わっ!!」

油断していた彼は「何するんですか!?」とびっくりして後ずさった。

その反応を見てケラケラ笑う私。たまには意地悪なことをして
彼をからかおうと思っていたのだけど

「マジやめてくださいよ!」と本気で引かれて少しズキンと心が痛んだ。

彼の高そうな服にかけてしまったから?
もしかして前に大人の落ち着いた女性が好きと言っていたから?

一瞬にして動揺した私は謝ろうかと逡巡していると
いきなり潮水をかけられた。

彼はケラケラ笑いながら「美雪さんもずぶ濡れっすね。」と言うと
ニカッと白い歯を見せて楽しそうに笑った。

「もう~。」

良かった。この時、彼の素の表情を初めて見た気がした。


< 154 / 175 >

この作品をシェア

pagetop