秘めた恋
すると「美雪さん!」と呼ばれ振り向くと和馬くんが後ろからひょこっと現れた。

「あー!和馬くん、どこ行ってたのよ!?」と聞くと
「え?美雪さん、俺を探してたんですか?」と図星をつかれ
「ち、違うわよ!釣りしてないからちょっと気になっただけ。」と
相変わらず可愛くないことを言ってしまった。

彼はくすっと笑うと「あー、美雪さん喉乾きません?」と聞いてきたので
「別に。」とそっけなく応えると「俺、喉渇いたんで自販機まで一緒に行きましょうよ。」と
誘われた。

「は!?今、一年生女子が買い出しに行ってるんだからそれを待てば良いでしょ?」と聞くと
「いや、待てません。干からびそうです。」と大げさに苦しそうな表情をするので理沙が笑って
「良いよ、私は大丈夫だから行って来なよ。」と言ってきた。

「えー、でも・・・。」と思ったがこの合宿中、あまり彼とふたりっきりになれないことが
予想されたので心の中で理沙に感謝すると、「もうしょうがないなー。」と言って立ち上がり
和馬くんの後を付いていった。

自販機の前に到着し、「何が欲しいの?」と彼を見上げて言うと「美雪さんです。」と
冗談を言われたので「ちょっと!」と私は彼を軽く叩いた。

「もう、スポーツドリンクで良い?」と言って適当に押そうとしたら
彼が後ろから私を抱きしめた。

「ちょっと、誰かにこんなとこ見られたら・・・。」

「ずっと、こうしたかった・・・。」

そう言われて私は何も言えなくなった。ずるい。

「そうだね、やっとふたりっきりだよね、私たち。」

そう言うと彼が私を自分の方に向かせた。私は自販機を背に凭れながら
身長の高い彼の顔を見上げた。

見つめ合うふたり。そして数秒後に彼が顔を近づけキスを軽くした。
私も一度は軽く受け入れたものの「やっぱ誰かに見られたら恥ずかしいから。」と言って
彼を少し押して距離を置いた。

私は自販機の前を向くと間違えて炭酸のボタンを押してしまった。
「これで良い?」と彼に渡すと動揺してんのがバレバレだなと少し気恥ずかしくなった。


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