秘めた恋
約束の金曜日となった。

木戸さんの仕事が終わるのを待つため私は一人オフィスビルの前にある
カフェのテラス席で読書をしていた。

夕暮れどきは少し冷える。私はストールを体に巻きながらコーヒーを啜った。

「ふぅ・・・。」

和馬くんにメールをしたけど返信がなかった。
また、会いたい、会ってちゃんと話したいなんて
私のワガママかな。

あの隣にいた女性も気になる。会社の人って言ってたけど
仲良さそうだったし。

「はぁ・・・・。」

その時だった。
「お疲れ様!」と言って木戸さんが待たせたことを詫びると
「さぁ、行こうか。」と言ってきた。

「え、えぇ。」

私は席を立った。

「外で読書なんて寒かっただろ?」

「えぇ、でも最初はまだ日も出てたし、1Fの店内は混んでたか・・・・」

「ん?」

「・・・・・・・・・・」

「橋本さん?」

私は1階の店内に和馬くんとあの時の女性が向かい合って座っているのが
目に入った。

なんであの二人がここに・・・。

「さぁ、行こう。」

「あ、ちょっと待って・・・。」

彼は私の腕を掴むと「悪いけどもう予約してるんだ。行こう」と言って強引に引っ張った。

「あ、木戸さん・・・。」

私は彼に引きずられるままカフェを後にした。

もう二人の姿が見えなくなるまで遠ざかってしまった。
< 166 / 175 >

この作品をシェア

pagetop