秘めた恋
本当に失礼な男。

「名を名乗れなんて、あなたから名を名乗れ!」

と変な文章で言い返すと

「オオハシです。」

と小さい子供に分かりやすく言うような口調で言ってきた。

「森です。」

私もそっぽを向いて、そう応えた。

せっかくの優雅なひと時がこいつのせいで無残にも砕け散った。
この代償は大きいんだから・・・

私は彼の方をキッと睨むと
「仕事が残ってるんで、失礼します!」と言って立ち上がり、
ふんっと言って彼に背を向けた。

後ろから笑い声が聞こえた気がしたけど、無視無視。

なによ、あのオオハシって男。

でも・・・同じ会社で唯一気を遣わずに話せる人が出来るなんて・・・

良い友人が出来たかも、とポジティブに捉え私はオフィスビルに向かった。
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