秘めた恋
「副社長?」

私が聞き返すと

「めっちゃイケメンの副社長のことよ!めったに出勤して来ないから
会えるだけでもラッキーなのよ。超羨ましい~。狙ってる女性社員も
多いんだから!」

と浅利さんはテンション上げ上げで応えた。

きっと浅利さんも副社長を狙っている女性社員の一人であるかと思うが
言わないのはきっと目の前に古橋さんがいるからだと思った。

「さっき、珈琲ショップの近くにいたのよ。」

ふっと笑いながら高梨さんが応えた。
その微かな笑いがあまりにも上品で、女の私でもドキッとした。

「えーそれだったらさっき通って来たのに気づかなかったですー」

私はイケメン副社長を見逸り、少し肩を落とした。

「さっき私にも気づかなかったわよ」

と手で口を押さえながら高梨さんが上品に笑うと
古橋さんを見て「副社長室まで案内するから付いて来て。」と言って
笑止した。

しばし見つめあう古橋さんと高梨さん。

でも、二人の目には鋭さがあり、
にらみ合っているようにも見えた。

私にはその意味が分からなかった。

古橋さんを狙っている彼女の目なのか、
高梨さんの気持ちを知ってて関心を示さない彼の目なのか・・・

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