秘めた恋
「それよりどうしたんだ?落ち込んでただろ。」

彼は麦茶をベンチに置くと濡れた唇を手の甲で拭いながら
流し目で私を一瞥した。
その仕草が色っぽくて不覚にもドキッとしたが
すぐ頭を振って払拭するときちんと座りなおして
遠くにある噴水やオブジェのある景色をぼんやりと眺めた。

「好きな人がいるんです。」

なぜかそう素直に言ってしまった。

「ほぉ~」

明らかに楽しそうな声を出す彼。

「で、名前は?」

私は目を瞑り意を決して想い人の名を言うと
「あーあいつか。」とオオハシさんが応えた。

「え!?あの人を知ってるんですか!?」

思わずオオハシさんに向き合うと

「あぁ。最近呼び出したから。」

「え!?なんで!?」

「なんでって、まぁ彼のことを色々と知りたかったし・・・」

「色々ってなん・・・」

なんでと聞き返そうとして思わず留めた。

「ん?」

オオハシさんがこっちを見てくるが私は「なんでもない。」と笑ってごかますと
「どんな人でした?」と話を逸らした。

「まぁ、デキル男って感じだな。それに格好良いし、あれは良い男だ」
と彼は腕を組みながら誇らしげに言った。


やっぱし・・・。

聞かないでよかった。

「そうですよね。」

そう応えるのが精一杯だった。

オオハシさんも古橋さんが好きなんだ。まさか、男のライバルが出現するなんて・・・



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