秘めた恋
『歩く彫刻』とはまさにこのことだった。
すらりとした高い身長、しびれるような落ち着いた低い声、
そして目鼻立ちが整った端正な顔立ちのまさに彫刻のような男性だった。

彼も同じ職場だったら良いのになぁとのんきなことを考える。
いや、あれだけの男前だったら彼女がいて当たり前かと落ち込む。
でも、これが私たちの運命の出逢いだったりしてーと一気に気持ちが明るくなると
これからの新しい生活に期待を感じずにはいられなかった。

ルンルン気分でスキップしながら、目的地に辿り着き、
入る前に一呼吸をして、なんとなく腕時計に目をやると
思わず、変な声を上げそうになる位、その時間に驚いた。


みんなが勢ぞろいのオフィスの中で一人遅れて縮こまりながら
申し訳なく出社したのは言うまでもない。


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