秘めた恋
×

彼はあの頃と全く変わらず可愛らしい寝顔で眠っていた。

一瞬、彼の唇に目がいき、思わず逸らした。

あの時のようにまたキスがしたいなんて思った気がして
自分にぞっとした。

しばらくすると彼の規則正しい呼吸音が聞こえ、
私の鼓動が早まった。

また、恐る恐る彼の方を見た。

彼をじっと見つめていた、その時だった。

ドアがノックされ、「古橋さんいますか?」と浅利さんが扉を開け、
入ってきた。

私が伝える前に彼女は古橋君の状態に気づいたのか
彼の隣に静かに座ると彼を見つめ始めた。

私がきょとんとその姿を見ていると彼女が私に気づき
「彼の寝顔、超可愛いですよね!癒されます。」と言って
また彼に視線を戻した。

彼女はうっとりするように頬杖をついて彼を眺めた。

馬鹿馬鹿しい、そう思い、私はデザイン画に視線を落とした。

< 42 / 175 >

この作品をシェア

pagetop