秘めた恋
見たくない光景が目の前にあった。

いつもは、視界に入れないよう避けていたのに。

彼が他の女の人と仲良くしている姿なんて
目に入るだけで気分が悪いのに
私の恐れていることが始まってしまった。

その場から一刻も離れないと・・・・

立ち上がりたくてもタイミングがつかめなかった。
私はデザイン画を見る振りをして、デザインを考える振りをした。
本当は何も考えられないのに、本当は涙でデザイン画が滲んで何も見えないのに。
二人の声が嫌でも聞こえて、離れられないのに。
私は目をつむると、ちょうどドアがノックされ、森さんが入ってきた。

「あのー・・・打ち合わせがあるみたいなので
お二人とも戻ってきてください・・・。」

申し訳なさそうに彼女が言うと、二人は立ち上がり浅利さんが部屋を出た。
それに続いて彼もドアに手をかけると一瞬私を見た気がした。

私は、デザイン画一点に集中して彼の視線にも気づかない振りした。
もしかしたら彼も私を見ずに出たのないかもしれない。

パタンと扉が閉まり、私は安堵を取り戻した。

はぁ・・・・重いため息をつくと頭痛が消えていることに気づいた。
その代わりに心臓の鼓動が早まり、運動をした後のように疲労感が増した気がした。

「何、してんだろ。私。」

彼のこと想ってもいないはずなのに
なんでこんなに動揺するんだろう。

自嘲気味に「バカみたい・・・」とつぶやくとデザイン画の上に突っ伏した。
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