秘めた恋
「このプロジェクトのチームリーダを務めてます杉並と申します。これからは森さんは資料作成等の社員のアシスタントを、古橋君には戦略会議に参加してもらいます。頑張って行きましょう。」と屈託のない爽やかな笑顔で杉並さんは挨拶をした。

「はい、頑張ります。」その笑顔に緊張感がほぐれ、これからの仕事に対し少し不安が取れた気がした。

「では。」と言うと高梨さんと杉並さんは二人でオフィスを後にした。

「なんかお似合いですね、美男美女というか。絵になります」と隣にいた『歩く彫刻』にさりげなく
声をかけるも彼の返答はなかった。

「? あ、あのーこれから宜しくお願い致します。」と会釈をすると

「下品な女」と古橋さんがつぶやいた。

「は?」思わず、悪口を言われてフリーズしていると
彼は、私に声をかけられていたことに今気づいたのか
「あ、悪い。何?」と聞いてきた。

どうやら私のことを言った訳じゃないけど人の話を聞いてないなんてちょっと見損なった。
でも、そんな不満もおくびにも見せず「これから宜しくお願いします。」と笑顔で応えると
「あぁ、宜しくな。」と笑顔が返ってきた。

可愛い!!少年のような無邪気な笑顔に私は思わずくらっとしてしまった。
恍惚したまま彼が人に呼ばれて会議室に入る姿を目で追う。

「あの人格好良いわね!」と今度は感じの良い年配の女性が話しかけてきた。
「はい、そうですね!」とすかさず私も応える。

「これから森さんを指導します水木と言います。分からないことがあったら私に遠慮なく聞いてね。」と
その優しい笑顔と言葉に救われ、ほっと一安心した。

「はい、宜しくお願い致します!」
私は深々と頭を下げた。まるで新入社員が先輩社員を慕うように。


「では、この会社の説明から始めるわね。」
そして私たちは隣同士席に着き、水木さんの説明に耳を傾けた。
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