秘めた恋
せっかくの好意を無下にし、一瞬良心の呵責に苛まれた。
だけど彼は気にすることなく、「そうですか。」と言うと
「そんな高いヒール履いてるからよろけるんじゃないんですか?」と
嫌味を言って踵を返し、去ってしまった。

私は、片目を押さえたまま涙を堪えた。
瞳が潤ったせいか目の痛みがおさまると今度は両手で
自分の体を抱きしめた。

震えが止まらない。

どうして、急に近づいてくるの・・・?
どうして平然と触ってくるの・・・・?

急にこんなことしないでよ。

こんなに優しく私に触れないで。
もう、どうにかなりそうよ。

私は涙を堪えながらよろよろと事務所に向かった。
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