秘めた恋
「大学時代から憧れてた。あの人は俺よりも二つ年上だけど
サークルが一緒で、顔を合わすたび言葉を交わすたび彼女に惹かれていった。
俺と同じ想いだと知って嬉しかったのに・・・あの人は俺が金持ちだと知って近づいてきたんだ。」

「・・・・・・」

「ショックだったよ。だけど所詮女はそういう生き物なんだって知って驚かなくなった。
他の女性も皆同じく俺の肩書きに食いついた。」

「そんな、そんなことないですよ。みんながみんな、そんなわけ・・・」

「悪いけど俺は女を信用しない。」

そう真正面から強く言われて私は言葉を失った。

***

ベンツに乗った後、私はふとあることを思い出し「そういえば私が古橋さんの話してるとき
やきもち焼かなかったですか?」と聞くと「あいつにか?うぬぼれるな。」と言ってきた。

「ち、違いますよ~。私に」

「は?」

「オオハシさん、ゲイかと思ったのに。」

「は~??」

彼は呆れたように私を見ると「お前は何を言ってるんだ。」と
非難するように言ってきた。

「そうですね、あんな素敵な女性と付き合っていたんなら違いますね。」と言うと
私は軽くため息をついた。

彼にそんな辛い失恋があったなんて。
女の人を信じられないなんて、そんなの切ない。
私のことも信じられないのかな?

「オオハシさん。」

「ん?」

「私のことは信じてくださいね。」

彼は、はっと軽く笑うと「どうだか」と言ってきた。

車内は薄暗くて彼の表情までは分からなかったけど
私は彼の方をじっと見つめながら心の中で「信じてください。」と祈った。

私は金目当てであなたと仲良くしてるわけじゃないと・・・
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