秘めた恋
私は誰もいない図書室に戻ると声を押し殺して泣いた。

彼は私と目を合わせようとしなかった。

みんなの前で私にあんなひどいこと言うなんて・・・

前まではこの場所で無邪気に笑いながら私のことを好きと言って
抱きしめてくれたのに・・・。

あの時の彼はもういない。

どうしちゃったの・・・急に・・・・。
大樹君・・・・。

****

掃除の時間、一人の女生徒と仲良く話す彼の姿が目に入った。
学年一可愛くてみんなに人気があると聞いたことがある。
そしてその女性も大樹君を狙ってると聞いたこともあった。
彼の目にはもう私は映らない。あの子しか映らないんだ・・・・。

「霧島さん」

「え?」

突然、ある男子生徒に話しかけられた。

メガネをかけた目立たない男子生徒、でも学年で成績トップの優秀な人だった。
「霧島さん、よく本読んでるよね。実は俺も読書好きなんだ」と言ってきた。

「え!?本当に?」

今まで話したことがなかったからびっくりしたけど
私と一緒で読書が好きな人がいて嬉しかった。

彼と好きな本は何かと話をしていると少し気がまぎれた。
嬉しくて思わず笑みがこぼれた。
「では、また。」彼が微笑みながら言うので「うん!」と笑顔で返事をして
掃除用具を片そうとしたとき、一瞬大樹君と目があった。

すぐ彼に目を逸らされ、私の心はまた天国から地獄に堕ちた気持ちになった。
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