秘めた恋
だけど彼は私の言葉を遮って話し始めた。

「あの時だって、急に色気づきやがって。
化粧も全然似合ってねーっつーの。」

「・・・・・」

「お前見てるとイライラすんだよ。
そんなに他の男によく見られたいか!
そんなに他の男と仲良くしてるとこ見せつけたいか!!」

「古橋君・・・・・」

私は耐え切れず、一筋の涙を流した。

彼は、掴んでた私の手を離すと
その場から立ち去ろうとした。

「ま、待って。大樹君!!」

私は過ぎ去ろうとする彼の腕を両手で掴んだ。

「違うの、全部。大樹君の誤解なんだって・・・」
私は涙ながらに言うけど彼は振り払うと

「杉並さんと仲良くやれよ。」

そう冷たく言い放ち去ってしまった。

私はその場に座り込み、泣きじゃくった。

嗚咽が止まらなかった。

あの頃の私はまだ未熟でみんなの反応を恐れた。
怖かった。彼と付き合ってることがバレたら
彼のことを好きな女子生徒からどんな仕打ちを受けるのか
想像しただけで怖かった。

私に勇気があればこんなことにはならなかった。
私がもっと素直になれていればこんなことには・・・。

本当は胸を張って大樹君の彼女だって言いたかったよ。
大樹君のためにこんなに綺麗になったんだよって言いたかったよ。
今なら言えるのに・・・・・。

ねぇ、こんなことになるのなら
あの頃の幸せだった二人のままで時を止めてよ・・・。
< 74 / 175 >

この作品をシェア

pagetop