秘めた恋


「森さん、杉並リーダーがどこにいるか知らない?」

「え!?」

スケッチブックを抱えた高梨さんが何かを急ぐように
気迫がこもった感じで私に話しかけてきた。

「あ、多分喫煙所にいるかと・・・・」

「ありがとう。」

高梨さんがお礼を言って立ち去った後、ほわっと
良い香りがした。

「あんなに急いでどうしたのかしらねー。」と水木さんも
驚いた様子だった。

私も少し戸惑いながら古橋さんを目で探すと
彼は高梨さんの後姿を感心なさそうな目で見ているようだった。

すると突然、杉並さんの机上にある電話が鳴り出した。
近くにいた私が受話器を取ろうとした瞬間に切れてしまった。
すぐにまたかかってくるかと思い待っていたが今度は掛かってこなかった。
ディスプレイには「副社長」の文字が入っており、
私のすぐ隣にいた女性社員が「えー副社長と話したかったー!」と
後悔したように騒いでいた。


そうだ、思い出した。東郷副社長、確か名前は東郷和馬だったはず。
オオハシさんも副社長と同じ名前だなんて縁があるなぁと思っていると
突然、ドアがノックされ「失礼します。」と言って綺麗な女性社員がオフィスに入ってきた。

ここのオフィスにいる女性とは違い、華やかだけど眉目秀麗のような
知的さも感じさせた綺麗な女性だった。

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