秘めた恋
「杉並プロジェクトリーダーはいらっしゃいますか?」とその女性は
みんなに尋ねた。

「ねぇ、あの人副社長専属の秘書じゃない?」と
こそっと水木さんが私に耳打ちしてきた。

「副社長の趣味だか知らないけど受付嬢もみんな超きれいで
どこかエロいのよ。」と言うものだから思わず噴き出しそうになった。

「今、離籍してますけど?」と同じ女として負い目を感じたのか
ぶっきらぼうに浅利さんが応えると「そうですか・・・。」と少し切ない表情を浮かべた。

「あれ、演技でしょ。哀愁漂わせてここにいる男を落とす作戦よ」と
水木さんが勝手なことを言って笑わせようとするので私が必死に笑いを堪えていると
その女性は古橋さんを見つけると彼の方に向かって歩き出した。

「悪いんですけど・・・。」
上目遣いで180cmある古橋さんを見つめると
「あなたに伝言をお願いしたいのだけど・・・。」とその女が言った。
その女の身長が170cm位なので遠目から見ると嫌だけど
美男美女のお似合いカップルに見えた。

「なんで俺に?」
古橋さんが面倒くさそうに応えると
「副社長に言われたんです。もし、杉並さんがいなかったら古橋に頼めって。」
と自分に自信があるかのように古橋さんの目を捕らえて応えた。

嫌な服。胸が大きいせいか、第二ボタンまで開けてるせいか分からないけど
谷間が少し見える綺麗な形をした胸だった。
タイトスカートはミニで形の良いヒップや細長い足が強調されていた。

私は古橋さんに色仕掛けをするように頼んでいるあの秘書が少し見てて不愉快になった。

「で、何?」

彼女はふふふと笑うと「副社長が杉並さんを呼んできて欲しいって。」と応えた。

古橋さんは嫌そうにため息をつくと喫煙所に向かって歩こうとしたので、
秘書が古橋さんの腕を掴んだ。

古橋さんが驚いて彼女の方を振り向くと
「ねぇ、今度一緒に飲みに行かない?」と言ってきた。

古橋さんは少しため息をすると「考えとく。」と言って喫煙所へと歩き出した。

はっきり断らない古橋さんの態度に私の心がムカムカと音を立てた。
< 76 / 175 >

この作品をシェア

pagetop