秘めた恋
彼の父は執行役員、いわば会社の偉い人。彼のお父さんのおかげでこうして私は
職に就くことが出来たけど、結婚については別物だった。

私が高校を卒業したと同時に両親が離婚。
家計を支えるために私がキャバクラで働いていたことなど言える訳がないし、
第一そんな娘との結婚を許してもらえるとも思えなかった。

「このらーめん、おいしかったな。」

気づくと、てんこ盛りに野菜やら具やら麺が入っていたはずの器は
すっかり空っぽになっていた。

「美優、全然食べてないじゃないか。」と言って私のラーメンを
自分の手前に置いて食べ始める。

その光景を、何も考えずボーっとしながら見ていると
「大丈夫。俺が親を説得する。」と彼は言ったが
ラーメンを啜ってる姿で言われてもなんの説得力も感じなかった。

私はため息をつくと入り口方面に目を向けた。


「彼が、この会社に来るなんて・・・。」

「え?」

つい、つぶやいていた自分に気づき、なんでもないと言って手を横に振った。

「ごめん!この後、印刷会社との打ち合わせがあったんだ。先行くね!」
そう言うと私は、急いで財布をカバンから取り出しお札を出した。

「いらないよ、そんなの。」
彼が頬張りながら応える。

「いつも払ってもらってばっかだし、今回のことも含めてお詫びというか。」

「べふにひらないのに~。」と食べるかしゃべるかどっちかにして欲しい。

私はお札を置くとすぐさまラーメン屋を出て会社に向かった。


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