秘めた恋
昔のような綺麗に輝いた彼女の姿はどこにもなくそこにいたのは
人生に疲れ果て痩せて地味となった小野花蓮だった。

「久しぶり。あ、霧島さん、なんか印象変わったね。
その・・・綺麗になったというか・・・。」

昔と違い私を見下した喋り方ではなくまるで
おどおどしながらも親しげに声をかけてきた。

「えぇ、小野さんも・・・なんか変わったわね。」

「あ、私はその・・・結婚したんだけど夫が多額の借金残して蒸発しちゃって。
私が連帯保証人になってるからその・・・色々とあって・・・」

「へー・・・。」

興味なさそうに返答をすると私は踵を返し一歩踏み出した。
その時だった。

「あの頃はごめん!」

そう声がして私は振り返った。

「いじめてごめん!」

彼女の大声が行き交う人たちにも聞かれ、見世物状態と化した。

「ちょっと何言って・・・。」

私は恥ずかしさのあまり彼女に近づき睨んだ。

「でも、私たち友達よね?」

そう彼女が満面の笑みで聞き返したので私は思わず彼女の胸ぐらをつかんで
引き上げた。

「ひっ・・・」彼女がそう怯えた声を出すと
私は彼女の耳元で闇の底から聞こえるような低い声で応えた。

「あんたみたいな虫けら、私の友達な訳がないでしょ」

かつてこの女が私に言った言葉だった。

私は無理やり胸ぐらをつかんだ腕を振り下ろすと
その反動で彼女はその場にしゃがみこんだ。

今度は私が彼女を高い位置から見下していると
その場で彼女が泣き崩れた。

周りの反応がどうでも良くなった。
彼女の馴れ馴れしい態度が私の気持ちを逆撫でし、
怒りが恥ずかしさを上回った。



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