秘めた恋
私は彼女を起き上がらすこともせずそのまま踵を返し、
その場を去ろうとした瞬間、彼女の涙ぐむ声が聞こえた。

「本当にごめんなさい、私を許して・・・。
だって悔しかったんだもん。大樹くんが私と付き合ってる間も
あなたばかり目で追うから・・・」

その言葉に私は足を止めた。

「あなたたちが付き合ってたこと知って腹が立ったの。
大樹くんがあなたのこと忘れてくれないから・・・。
だからむかついて・・・本当にごめん・・・・」

喉の奥がつんとした。だけど唇を噛みそのまま
駅へと歩き出した。


好き・・・・・

大樹くんのことが・・・・・

この想いを消し去りたいのに・・・・


蘇らせたくない、あの想いを
私には賢斗がいるのに・・・・

目を閉じると一筋の涙が頬をつたった。


もう、頭の中がぐちゃぐちゃで
私はどうしたらいいのか分からなくなった。
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