秘めた恋

彼は店内を見回すと「店員がどこにもいないな」とつぶやいた。
彼は窓の外、テラス席の方にも視線を向けた。

「ねぇ、オオハシさん！！意味わからないですよ。
ちゃんと説明してくださいよー！！」

私は、テーブルの上に置かれた彼の腕をつかみ、
さすりながら甘えたように言ったけど彼は窓の外を向いたまま
じっとして動かない。

変に思い、私は手の動きを止めると私も窓の外に視線を向けた。

え？

ちょうど私たちから見て真ん中に設置されたテラス席に
ストールをかけ、読書をしている女性が目に入った。

あ、あれは確かオオハシさんの元カノで確か美雪さんって言ってたっけ？

見た感じ一人で優雅に読書をしているようだった。
まるでビーナスのように美しい横顔でその場にいる人達も彼女に釘付けだった。

「あ、あの人も、いたんですね。綺麗な人が読書してる姿って絵になりますね～」
なんて言いながらオオハシさんの方を見ると
思わず胸がズキンと鳴った。

え？

彼は私の声が聞こえていないのか、ずっと彼女の横顔を見つめていた。

「オ、オオハシ・・・さん？」

なぜか、胸がズキズキと痛かった。

なんで？