秘めた恋
「今ならまだ間に合う。あのデザイン画は高梨美優が考えたものだと言え。
そうすれば会社側が特許の権利を彼女のものだと認め、それに見合う対価を支払うことが出来る。」

俺がそう言うと彼は不敵に笑った。

「悪いが、あのデザイン画は美優が考えたものではない。
そして俺はあのデザイン画の特許は会社のもので良いと考え、報酬も拒んだんだ。」

「なぜだ。」

俺が真剣に尋ねると向こうは笑いだした。

「それが一社員として会社に貢献するってことだろう。
悪いがお前にこれ以上付き合ってられん。それ以上訳の分からないことを言ったら
今度こそただじゃおかねー。」

至近距離で俺を睨んだ後、杉並はこの場を後にした。

俺はスラックスのポケットに忍ばせていた録音機を取り出すと
「そろそろだな。」とつぶやいた。

俺はそのまま喫煙所に向かうことなく踵を返すとある人のもとへ向かった。


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