君は囁く~涙とともに~

「そんな顔すんなよ!
今の話じゃないぞ?
小学校の時の話。
しかも四年生くらいの時のな。
でも多分あの時から吾妻は光輝のこと好きなんだろうなって思ってたし。
だから何も言わなかったんだけど」

「そっ…か」

びっくりした。
今の話かと思った。
…いや、今の話だったらどうしようかと思った。
よかった、過去の話で。
過去だといって、気まずくないって言ったら嘘になるけど、今の話って思うよりは気が楽だ。

「そんな気まずそうな顔すんなよ!
お前らもだぞ?」

大翔が笑いながら俺達の肩を叩いていった。
三人は苦笑いって感じだったけど、
正直俺は笑えなかった。
でも、過去の話だもんな。
…気にしなければいい。

「ああ、もう!
そんな顔するなって!
俺はまだお前に聞きたいことあるんだよ!」

大翔は俺を見ながらそう言った。
…まだあるのか。
別になくていいんだけど。
そう思ったけど、このまま気まずい雰囲気が流れるよりかはいいかと思ったから大翔の話を聞くことにした。

「何?」

「…何て告われたんだ?」

急に小声になって、囁く程の声で言った。

「…忘れたよ」

「嘘つくなよ!本当は覚えてるんだろ?
昨日のことだぞ?
忘れる訳ないな」

どこか勝ち誇ったように聞こえるその言い方。
でも当たり。
忘れてなんかいない。
でも…さすがにそれは言わない方がいいんじゃないか。
そう思った。

「別に何でもいいだろ…」

少しため息混じりになってしまった。
面倒くさい、そういう気持ちがあったのかもしれないけど。
ちょっと言い方悪かったかな。
後からそう思って、さっきの態度に後悔した。
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