君は囁く~涙とともに~

俺が大翔の席に着いたとほぼ同時に、
教室の前側のドアが勢いよく開けられる。
思わずそっちの方を見ると、
相手は運悪く豊田先生本人だった。

…うわ、まじかよ。
しかもばっちり目も合ってしまって。
そらすにそらせない状態。

「…おい。
お前、なんでそこにいる」

先生がじろっと俺の方を見ながらそう言った。
眼鏡の奥に見える目がありえないほど怖い。
何も言えない俺は黙るだけ…。
何とも弱い奴。

「自分の席に戻れ」

「…はぁい」

先生の気迫に耐えられなくなり、
ゆっくり立ち上がるとそのまま席へ戻った。
でも動いたのは俺だけ。

「お前らもだよ!」

そう先生の怒鳴り声。
その先にはもちろん、俺と一緒にいた大翔以外の三人。
チッ、バレたかとか言いながらみんな立ち上がる。
…バレねぇ訳ねぇだろ。
思わずそう心の中で突っ込んでしまった。
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