君は囁く~涙とともに~
『え、待って…どういうこと?
吾妻って、谷口のこと好きなのか?』
『えー…俺吾妻狙ってたのに』
周りからぼそぼそと聞こえてくる声。
それが聞こえて我に返る。
「あ、ちょっと声大きかったかな?」
唯はそう言うと、
てへっとでも聞こえてきそうな笑みで周りを見渡していた。
…有り得ねぇ。
最悪だ。
『まさかのここで、公開告白!?』
また遠くから聞こえる声。
「違うよ!
もう既に告白してフられちゃってます!」
「……おい」
真面目なのか馬鹿なのか。
いや、阿呆だな。
それを言うことが恥ずかしくないのか。
「じゃあ吾妻ちゃん!
俺のこと好きになりなよ!」
そう言った奴は誰だかすぐ分かった。
…中山統雅。
昨日からクラスで一番目立ってて、誰もがすぐ名前を覚えた奴。