君は囁く~涙とともに~
「いやぁ、
私は光ちゃん一筋なので!
すみません!」
笑いながらペコペコ頭を下げる唯。
〝光ちゃん一筋〟
その言葉に安堵した。
…って、何でだよ。
他の奴、好きになってもらった方が俺は楽なはずなのに。
訳分かんね…。
「ね!光ちゃん!
…っていない…あぁ!いつの間に!」
俺は唯が振り向く前にパンを完食して
さっさと大翔の席に逃げていた。
クラス全員の注目の的になるのは御免だ。
唯は俺のところにズカズカと歩いてくる。
…来るなよ。
そう思っても、逃げられる訳がない。
それがもう分かってるから逃げない。
「光ちゃん…今ちょっと恥ずかしかったじゃん!
光ちゃんのせいだよ!」
「俺のせいかよ……
元々唯があんなこと大声で言うからだろ…」
唯の馬鹿でかい声とは対照的に、
俺は唯だけに聞こえるくらいの小さい声で反論した。