僕とあの子の通学電車
「うおあ!はっせーじゃん!久しぶり!」
俺ははっせーに近寄った。
「大山だー。」
はっせーは俺にニコッと笑いかけた。
すると、隣にいた女子高校生が顔を赤くした。

はっせーはかっこいい。
さらさらした黒髪。
長い睫毛に漆黒の瞳がはまった切れ目。
背も高くて、細身で、でも筋肉はしっかりついている。
男子の俺がみてもかっこいい。
それに勉強も料理も運動もできて、ホントにすごい。

俺がはっせーに見惚れていると、はっせーは困ったようにいった。
「あのさぁ、そんな見られるとなんか恥ずかしいんだけど?」
「あっ、ごめん。」
「どーかした?」
「ん?はっせーの学ラン姿がとても似合っていて見惚れた。」
「おい。俺はそっちのケはないぞ。」
「別に、そういうんじゃ。……また舞香を取られちゃうなーって。」

舞香は俺の彼女だけど、実際ははっせーが大好きだ。
大好きとかそう言うものじゃない。
愛してる。
それを知っている上で俺はあいつの彼氏をしている。

「取られちゃうもなにも、今はお前のもんだろ。別に取る気もねーよ。」
「わかってるけど、はっせーかっこいいんだもん。」
「あっそ。」

電車が来た。
2人で乗る、満員電車。
さっきの女子高校生がおっさんに押されてはっせーに密着。
すごい嫌な顔をしてたけど、密着した相手がはっせーだと気付いてまんざらでもなさそうだった。

「女子は大変だよな。満員電車。」
俺がボソッと呟くと、はっせーが少しニヤッとしながらきいてきた。
「彼女が心配?」
「そりゃ、ちょっとは心配だけど…舞香だから大丈夫だと思ってる。」
「舞香だもんな。」

舞香は、強い。
何って、メンタルと、握力と、あと精神的攻撃が。
舞香は、学年一の美少女だった。
俺の彼女であるのが不思議なくらいに。
だけど、誰も彼女に告白する男子はいなかった。
その理由は二つ。
一つは高嶺の花過ぎたこと。
もう一つは、

多重人格なこと。

天使の舞香もいれば、悪魔の舞香もいらっしゃる。
そして、男子な舞香もいた。

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