一秒の確信
彼女をもっと知りたくなる。
そんな自分は友人との付き合いは疎かになっていた。

何気にたまに話す麻子の話を僕は聞き逃さない。

麻子「今日はおばあちゃんが居ない。女の人がご飯を作るの。イヤ。」

楓「…お母さんは?」

麻子「どっちも居ない。」

楓「そんな事言うなよ。」

麻子「本当。あたしはお金持ちの男と結婚して、裕福な家庭に住むの。オヤジとは口きかない。金貰う時だけ。いつも敬語。」

楓「何で?結婚しちゃうのか?」

麻子「うん。料亭に居てお金には困ってないから。慣れだね。あたしの話は面白くないからあなたの話をして。…楓君は、あたしの事好き?」

息が詰まった。
初めての感情で、これを恋と呼ぶのか愛と呼ぶのか、なにものなのか。
そしてこのもどかしさを伝えても良いのか。

楓「す…いや…う…ん。」

麻子「あたしは好きよ。可愛い。」

一瞬聞こえなかったけど、なんとなくその後解ったんだ。
でも聞かないフリしたんだ。

楓「えっ?」

麻子「何でもないよ。」

楓「良く解らないんだ。甘えてしまって。麻子が毎日朝まで電話付き合ってくれてさ、ちゃんと寝てるの?」

僕なりに考えたと思ったら、急に不機嫌になったりして。

麻子「気を遣う楓君は嫌い。」

楓「解った。」

毎日毎日、学校の時間まで話してた。
受験に追われない僕と、受験勉強中の麻子にとっては僕が足枷になると考慮したかったけど。

だって彼女が、それをイヤだと言うんだ。
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