一秒の確信
麻子はいつ寝てる?
そんな気遣いもとっくに忘れていた。

楓「もう少しだね、会えるの。」

麻子「そうだね。」

彼女は推薦で看護職に目指す学校にすんなり合格した。

麻子「ねぇ、あの子からはまだ電話来るの?」

楓「来てる。でも相変わらず殆ど喋らないで電話してきて、まるで無言電話だ。」

麻子「モテモテだねぇ、相変わらず。楓君はその子に興味ないの?」

楓「麻子が思うよりはモテてないよ。まぁ精々何十人かに最近告白された位。その子に関しては…ま、綺麗だとは思うけど、毎日無言電話じゃ…良くわかんないよ。」


僕は俗に言うモテ期というのか、そうゆう状態になっていた。
麻子は”きっと髪型変えたからだよ”なんてふざけて笑ってる。
そんな彼女の声質が好きだった。

彼女の声は少し擦れ気味で、ハスキーともまた違う。
声が小さく、僕が受話器越しに耳を澄ませないといけない位。


麻子「充分モテてるって。あたしは幸せだなぁ。こうやって毎日楓君と話せてるもん。良いのかな…。でもさ、その子、背高いんでしょ。あたしの方が高いけど(笑)」

楓「O型だしね。」


僕は以前、彼女にノせられ、好みのタイプを告げていたから知っている。
僕がカッコイイ女性が好きなことも、背丈がある女性が好きなのも、好みの血液型すらも。


麻子「ねぇ、あたしが冬休み会いに行くとき。会ったら…」

楓「…なに…麻子。」

麻子「そん時ね、会って心が繋がったと思ったら直ぐに手を繋ぐの。そしてキスをするんだぁ。」

楓「…うんっ!」

僕は子供みたいにはしゃいで見せた。
それを麻子は可愛いと呼ぶ。

綺麗な表現だなと思った。
どんな意味かは幼い僕には難しかったけれど。
そしてキスの味なんて解らなくって、本当にレモンの味がしてしまうんじゃないかと思った。

麻子「でね…付き合おう…。あ、心が繋がったとお互いに思ったらだよ?」

楓「…うんっ!…でも…きっと麻子は俺なんか好きになんないよ。」

いつも先読みされている気がしてる。
僕の心は完全に彼女の掌だ。

麻子「どうして?今でもこんなに愛おしいと思っているのに?あっ、でも年上が好きな楓君だもんね。あたし同じ年だもんねっ!(笑)」

関係ないから。
麻子は充分、大人っぽくって、追い付けないんだよ。

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