一秒の確信
麻子は僕に毎日の様に問うんだ。

麻子「あたしこんなに楓君を独り占めしてるみたいで大丈夫なのかな?」

僕はこの女を繋ぎ止める様にして答えるようになった。

楓「大丈夫さ。麻子と僕の友人は関係ないから。気にしないで。」

麻子「あたしの事なんて、構わなくていいのに。」


何故、そんな事を言うのか僕には解らなかった。
麻子が何処か遠くに感じる気がした。
だけど以前とは、何かが違う…そう感じていた。


楓「何でそんな事言うんだ、俺は麻子と話したいから話してるの。俺の友人の事なんて、気にしないでいいんだよ。アイツらは、僕が居なくても普通にやってるから。」

麻子が黙る。
沈黙の間に鼓動の音だけが高鳴る。

ドクン
ドクン
ドクン
ドクン

麻子「楓君…。」

何かを言おうとする、麻子を怖がった。

楓「な…に…。」

麻子「ソフト部の子は…?電話の女の子は?」

上から目線に聞こえる。
僕は口を尖らせて言う。

楓「関係ない。ソフト部のエースは俺を裏切った。無言電話の女は俺の事なんて興味ない…!」

麻子「御免ね。…だってあまりにも楓君は、楓君の時間をあたしに使ってるから。最近、友達とも会ってないんでしょ?」

僕は言葉に詰まる。

楓「たまに会ってる。けど、麻子との時間が僕には必要なんだ。」

麻子「あたしは、楓君が、あたしにだけ時間を使っていて、あたしは、申し訳ないよ。あたしみたいなツマラナイ女に楓君の時間を使わせるなんて勿体ない。」

楓「…ごめん。僕は自分の事をこんなに赤裸々に話をした事がなくて。…甘えていたのかもしれない、ごめん…」

麻子「あたしこそ御免…。あたしにとって楓君は光なんだよ。」


―光…。
それが彼女にとってどんな意味をもたらすのか
それが彼女にとってどんな感情なのか

幼い僕には到底、理解の仕様がない言葉だった。

甘い筈の、中学三年の冬。
難しい言葉を並べる麻子が、ある意味…
僕にとっての

『闇に光る言葉』のようで
幼さ故に、序所に翻弄されてゆく自分に…
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