一秒の確信
時が経過し、高校生になっていた。
札幌から割と近い、寮付きの看護学校。

麻子は高校生活を満喫していた。

僕は殆ど、放置されていた。

いつか離れていってしまう。
そんな不安を常に常に感じながら。


麻子「楓君?あたしは学校で忙しいの。今あたしが居る学校は、毎日全員がピリピリしていて、友達付き合いも怠るとすぐに一人になる。此処は怖い所だよ。」


麻子と交際している事は僕の周りの友人だけが知っていた。

「それっておかしくない?確かに大変なのかもしれないけど、楓だけが彼女居るって周囲に言っててさ、何?その女。自分だけ楓の事交際してるって友人にバラしてないのって卑怯。…私、あの女から奪っちゃおうかな、なんてね。」

「…えっ?」


もう、僕は狂った様に、自分に寄ってくる女総てと遊んだ。

麻子「楓君。今日も電話出来なくて御免。学校の友達の付き合いで…。」

楓「もう、いいよ。俺には沢山好きだと言ってくる女なんていくらでも居る。麻子は麻子の生活をしな。俺はもう、何も言わない。…だって、麻子は自分の友達には俺と付き合ってる事言ってないんでしょ?これは交際してない様なモンでしょ。…大変だろうし、今だって寮なんだし、周りに俺達の話まで聞こえてるなんて嫌だから。」

麻子「言えないんだよ。噂は早い。あたしの学校では、表では仲良くしてるつもりでも、裏では噂。そんな所にあたしは居るんだ。…こんなあたしを嘲笑ってよ。」

楓「いいって。学校頑張って。」

麻子は怒った口調で告げた。

麻子「あたしの居る所は大変だ。楓君も沢山女の子居るなら遊びな?あたしと電話なんてしてないで。…もう…二度とあたしに入り込まないで…!!」


それから僕は寄ってくるもの、お構いなしに、告白されてはイエスを言った。
7人も女が居たのだ。


とある日、麻子からの電話なんて一切期待もしてなかった、夕方16時。
着信は麻子。
僕は電話に出て話をする。
そう、泣かない彼女が初めて弱く、凍えていたね。
あの時は、息が止まりそうだったよ、麻子。


「楓君…本当に御免なさい…あ…たしには…楓君が必要なの。出逢った時から、貴方を光と思った。住む世界も違う、そんな楓君がこんなあたしに素直にぶつかって来てくれた事、いや…楓君の純粋を壊した。…可愛くないのはあたし…あたしだよ。あたしには楓君が必要なの。…本当は、ずっとずっと、不安だった。楓君は沢山愛されていて、あたしはいつか楓君に必要とされない、そう、不安だった。」

泣いて泣いて喋る麻子の言葉を真剣に聞いたんだよ。

「楓君…あたしは…いや…私は子供なの。楓君よりずっとずっと。何にも言えない、楓君への嫉妬も、苦しくって、貴方を忘れようとしたあたしがそこに居たんだ…。ごめんなさい…楓君、あたしともう一度…やり直して…。今居る女の子達も切って…楓君に好きと迫る、その子達を…。」


僕は麻子が可愛いく、抱きしめたいと口走った。
総て言い放った彼女は、ホッとしたみたいに僕に言った。

「それは、あたしが楓君を抱きしめるの。可愛いの。楓君。あたしにさせてよ。」



中学三年の冬休みの時、麻子は僕に笑いながら話したね。

麻子「間取りは此処はもっとこんな感じで、で、あたしがおはようって楓君に朝食を出すの。そのにおいで楓君は目覚めるんだよ。」

楓「そっか、俺は麻子の朝食で目を覚ますんだね(笑)」

麻子「そう!一緒に住もうね、必ずだよ?」


そうして指切りを交わした、あの日、きみは覚えて居るかい。
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