性悪な彼のオモチャ




肩に両手を置かれてあたしは、強く睨み付けた。



何、もしかして…転ばせる気?



「そんな顔したって無駄。」




そう言い放つと、顔が近づいてきて頬にふわっと柔らかい感触。




…な、何した?何をしたんだこの男。



「今日は、最初だからこれで許してやるよ。オモチャちゃん。」



『き、き、きゃっ…』



キス、された。


王子様にしか、キスされないはずの頬にキスされてしまった。



ううっ、あたしの王子様との夢が脆く崩れていく―…





頬にでも、キスされるなんていやなの。
いくらかっこよくたって、王子様みたいに優しくて性格がよくなかった王子様なんて言えないんだから。



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